ヨークシャー・テリアの公認毛色はダークスティールブルー&タンですが、子犬の頃はブラック&タンで、生涯に7回毛色が変化すると言われています。しかし、近年AKCにヨークシャー・テリアから生まれたパーティーカラーの犬を固定した「ビーヴァー・テリア」が登録されたり、非公認毛色のヨークシャー・テリアのみのショーが開かれたりするなど、ダークスティールブルー&タン以外の毛色の固定を進めているブリーダーもいます。それらの犬種や毛色について紹介します。
■ヨークシャー・テリアの公認毛色
ヨークシャー・テリアの公認毛色はダークスティールブルー&タンですが、年齢によって毛色は大きく異なり、生まれたばかりの時はブラック&タンで、ゆっくり時間をかけて退色します。ブラックの毛は光沢のあるダークスティールブルーに、タンの部分も光沢が出てきます。また、子犬の頃は頭部はブラックですが、成犬になるとユーメラニン発現の部分が後退していき、最終的に頭部はフェオメラニン発現の毛色(タン)となります。
AKCなどでは公認毛色をブラック&タン、ブラック&ゴールド、ブルー&タン、ブルー&ゴールドとしており、退色しない個体は少ないと考えられますが公認毛色の範疇にあります。
■ビーヴァー・テリア
1884年にドイツ人のビーヴァー夫妻の2009年にスタンダードが作成され、2021年にAKCに197番目の犬種として登録された犬種で、FCIには登録されていませんが、日本にも輸入されています。英語のスペルが”Biewer Terrier”なので、「ビューワー・テリア」と呼ばれることもありますが、英語の正しい発音は「ビーヴァー・テリア(ビーバー・テリア)」です。別名は”Biewer Yorkshire Terrier””Biewer Yorkshire à la Pom-Pon”です。
ビーヴァー・テリアの毛色は基本的には、対称的なブラック/ブルー、タン/ゴールド、ホワイトの任意の組み合わせ、つまりトライカラーです。また、ブラック/ブルーとタン/ゴールドの任意の組み合わせ、つまり普通のヨークシャー・テリアの毛色と似ているものや、タン/ゴールドとホワイトの任意の組み合わせといったバイカラーも認められています。
■ビロ
英語で”Biro”と書き、”Biro Terrier””Biro Yorkshire Terrier”などとも呼ばれ、2004年にドイツの有名なビーヴァー・テリアのブリーダーの元でチョコレート&ホワイト ゴールドの毛色の子犬が誕生し、2005年には父犬が同じで母犬が親子関係(娘)にある別のブリーダーの子犬も同じ毛色だったため、繁殖が開始されました。”Biro”と言う名前は交配を始めたブリーダーの内の、Birgit RosnerとRoberto Krahの名前から取られました。犬種クラブがあり、いくつかのケネルクラブにおいて公認されていますが、FCIなどの主要なケネルクラブには認められていません。2023年には日本に輸入されたようです。
毛色はチョコレート&ホワイト ゴールドでチョコレートは明るい色から暗い色まで様々な色合いが認められていますが、ビーヴァー・テリアのようにバイカラーは認められていないようです。胸、腹、脚の毛色はホワイトです。
■ゴールドダスト・ヨークシャー・テリア
英語で”Golddust Yorkshire Terrier”と書き、”Golddust””Golddust Yorkie”などとも呼ばれます。
ビーヴァー・テリアのラインから発生し、「ビーヴァー ホワイト ゴールド」として登録されていましたが、この毛色はビーヴァー・テリアのスタンダードには沿っていないものであったため、認められませんでした。2007年にドイツで2匹の最初のゴールドダスト・ヨークシャー・テリアが登録されました。NAKCやIABCAには登録されていますが、FCIなどには認められていません。また、ゴールドのヨークシャー・テリアはゴールドダスト・ヨークシャー・テリアかどうかは不明ですが、日本にも存在するようです。
毛色がゴールド一色またはゴールド&ホワイトです。また、体重が5キロまで認められています。ゴールド&ホワイトはビーヴァー・テリアのスタンダードに沿っているようですが、体重などビーヴァー・テリアとは異なる部分があります。(ビーヴァー・テリアの体重は1.8~3.6キロ)
ただし、ビロ、ゴールドダスト・ヨークシャー・テリアともにビーヴァー・テリアのカラーバリエーションのように扱われたりすることも多く、元のラインではなくてもその毛色が生まれればビロやゴールドダスト・ヨークシャー・テリアと呼んだり、「ビロ」、「ゴールドダスト」などのように毛色名として使用される名称となったりするため、かなり定義はあいまいと言えるでしょう。また、AKCによるとビロの毛色はビーヴァー・テリアの非公認毛色でもあるようです。
■その他の毛色
以下に示す毛色は基本的に主要なケネルクラブには公認されていませんが、「カラード・ヨークシャー・テリア」などと呼ばれ、「カラフル・ヨークシャー・テリア・クラブ(チェコ)」など犬種クラブも存在します。
・チョコレート(chocolate)
ビロとは違い、ホワイトやタンポイントが入らないソリッドチョコレートの毛色です。
・チョコレート&タン(chocolate&tan)
ビロとは違い、ホワイトが入らないチョコレート&タンの毛色です。
・オーシャンパール(Ocean Pearl)
一般的にセーブルと呼ばれる毛色で、生まれたときは黒い差し毛がありますが、成長とともに薄くなります。(完全に差し毛がなくならない場合もあります。)成犬になるとゴールドダストと見分けがつきにくいですが、子犬の時には判別しやすいです。
・アッダ(Adda)
ホワイトオーシャンパールとも呼ばれるセーブル&ホワイトの毛色です。生まれたときは黒い差し毛がありますが、成長とともに薄くなります。(完全に差し毛がなくならない場合もあります。)
・カプチーノ(Cappuccino)
チョコレートセーブルの毛色で、生まれたときにはチョコレートの差し毛がありますが、成長とともに薄くなります。(完全に差し毛がなくならない場合もあります。)
(検索してもほぼヒットしなかったので少数のブリーダー独自の名前の可能性があります。)
・ミルク&コーヒー(milk&coffee)
チョコレートセーブル&ホワイトの毛色で、生まれたときにはチョコレートの差し毛がありますが、成長とともに薄くなります。(完全に差し毛がなくならない場合もあります。)
(検索してもほぼヒットしなかったので少数のブリーダー独自の名前の可能性があります。)
・ブルーマール(blue merle)
典型的なブルーマール&タンで、灰色の地に黒の斑があります。
・チョコレートマール(chocolate merle)
典型的なチョコレートマール&タンで、薄い茶色の地にこげ茶色の斑があります。
・ブルーベリー(blueberry)
ブルーマール&ホワイト タンの毛色で、ビーヴァーマールとも呼ばれます。
・マルベリー(mulberry)
チョコレートマール&ホワイト タンの毛色で、チョコレートベリー、チョコベリーとも呼ばれます。
他にもツイードマール、ライラック、ライラックベリー、ブリンドル、セーブルマール、チョコレートセーブルマール、ゴールドセーブルなどがあります。
また、毛色ではありませんが、「ブルーダイヤモンド」と呼ばれるヨークシャー・テリアもおり、これは目が青いヨークシャー・テリアのことを指します。目が青くなるのは主にマール遺伝子によります。
■レッド・ヨークシャー・テリア
“Red Yorkshire Terrier”と書き、”red-legged Yorkshire Terrier”とも呼ばれます。犬種ではなく、基本的には純血種のヨークシャー・テリアですが、ドッグショーにおいては欠点とされます。レッド・ヨークシャー・テリアを交配すると、レッド・ヨークシャー・テリアが生まれる可能性が高くなるため交配の推奨はされません。しかし、ヨークシャー・テリアはシルキーコートの犬ばかりを何世代も掛け合わせると毛色が薄くなったり、毛質が悪くなったりするようです。(科学的根拠は不明です。あくまで経験的なものだと考えられます。)ヨークシャー・テリアの濃い毛色と毛質を守るためには時々ラインに導入するのが良いと言われ、ショーにはほぼ出られませんが、交配に使われることもあるようです。
ヨークシャー・テリアのタンの部分の毛色がより濃く光沢のある赤茶色で、成長するにつれて濃くなります。ブラックの部分も退色が起こりません。毛の密度が高く、ウェービーまたはワイヤーの毛質です。常にではないですが、通常のヨークシャー・テリアよりも毛は短くなる場合があります。
■まとめ
ヨークシャー・テリアから派生した犬種と非公認毛色について紹介しました。日本でダークスティールブルー&タンや子犬の頃のブラック&タン、それらの中間の毛色など以外の毛色のヨークシャー・テリアやビーヴァー・テリアなどを見ることは珍しいと思いますが、世界的には人気が増え、犬種クラブも作られているのでビロや他の毛色のヨークシャー・テリアも日本に輸入されることもあるかもしれません。JKCはFCIのスタンダードに準拠しているため、当分の間これらの毛色を公認することはなさそうですが、他の多くの小型犬の人気犬種やミックス犬のようにこれからどんどん毛色が増えていくのかもしれません。また、レッド・ヨークシャー・テリアのように、非公認毛色ながらもこれまで時々生まれ、時々ラインに導入されてきた毛色もあります。かなり珍しく日本にはほとんどおらず、また日本においてヨークシャー・テリアを繁殖している中でも導入しているブリーダーもほぼいないと考えられます。非公認毛色の個体がその犬種の犬質を保つために使われてきたというのは不思議ですね。