日本でも人気があるゴールデン・レトリーバーですが、その系統とタイプは一種類ではありません。目的や改良国、見た目の違いについて紹介します。
※本記事内で紹介しているアメリカタイプ、イギリスタイプ、アメリカ系統、イギリス系統などの用語は一般的に定義されているものではありません。ご了承ください。
■アメリカタイプとイギリスタイプ
イギリスで誕生したゴールデン・レトリーバーはアメリカなどに渡り、それぞれの国で交配が進み、異なる犬種標準が定められたため、異なる特徴があります。また、AKC(アメリカタイプ)とKC(イギリスタイプ)ではスタンダードも異なります。イギリスタイプのゴールデン・レトリーバーはクリームの毛色のイメージがありますが、ゴールドも存在します。「イングリッシュ・クリーム・ゴールデン・レトリーバー」と呼ばれるタイプがイングリッシュ・ゴールデン・レトリーバーと聞いて想像される犬のことだと考えられます。
また、それぞれの国で採用されているスタンダードが異なるため、ここでは代々イギリスで繁殖されてきたゴールデン・レトリーバーをイギリス系統、アメリカに持ち込まれて改良されたゴールデン・レトリーバーをアメリカ系統と呼び、イギリスタイプはKCのスタンダードに準拠したゴールデン・レトリーバーのこと、アメリカタイプはAKCのスタンダードに準拠したゴールデン・レトリーバーのことを指すこととします。(あくまでこの記事内での表現です。)
日本に多いタイプはどちらかと言われると表現は難しいですが、アメリカ系統のイギリスタイプです。アメリカから輸入された系統が多いそうですが、イギリスと同じスタンダードに合わせています。日本のゴールデン・レトリーバーはJKCに登録されており、ショータイプのゴールデン・レトリーバーはJKCのスタンダードに沿って繫殖されているからです。JKCはFCIのスタンダードと基本的に同じものを採用していると思われます。また、FCIのスタンダードはKCのものと同じ部分が多く、こちらを参考にしているようです。イングリッシュゴールデンや英国ゴールデンと言った名前で繁殖されているゴールデン・レトリーバーは「イングリッシュ・クリーム・ゴールデン・レトリーバー」のことで、こちらは珍しいものの全く見かけないわけではないと言うイメージです。つまり、日本における、アメリカタイプとイギリスタイプの分類は一般的に主に毛色でされているように思われますが、JKCやFCIのドッグショーに出陳している限り、イギリスにおけるスタンダードに沿っているため、イギリスタイプと呼べるということです。
しかし、日本に存在するゴールデン・レトリーバーがアメリカ系統かつアメリカタイプ(例えばAKCのドッグショーでチャンピオンになった犬やその直子のようにAKCのスタンダードに合っている犬)だとしても、JKCのドッグショーに出られないか、もしくはとても不利になるかと言われればそうではないと思います。AKCとKCのスタンダードが似ている部分や同じ部分もたくさんあり、うやむやになっている部分が多いのではないかと思います。
アメリカタイプの特徴
・ゴールドの毛色
・耳が目より高い位置につき、先端は頬の高さである
イギリスタイプの特徴
・クリームやゴールドの毛色
・耳が目の高さについている
アメリカ系統の特徴
・ゴールドの毛色が多い
・よりエネルギッシュ
・スリムな体型
イギリス系統の特徴
・クリームの毛色が多い
・比較的穏やか
・がっしりとした体型
カナダタイプ、系統の特徴
・クリームからダークゴールドまでの毛色
・フェザリングが少なめ
(性格については一般的に言われていることであり、個体差があります。)
アメリカタイプの方がイギリスタイプより体高が高いと言われています。イギリスタイプのゴールデン・レトリーバーのスタンダードを定めているKCの規定に体重がないためどちらが重いかは不明です。また、イギリス系統はアメリカ系統に比べてブリーダーの販売価格が高いことが多いようです。研究によってはイギリス系統はアメリカ系統よりも癌になりにくい(癌による死因の割合は、アメリカのゴールデン・レトリーバー:61.8%、イギリスのゴールデン・レトリーバー38.8%)と言われ、寿命もイギリス系統の方が長いと言われることがありますが、それぞれの血統や国によっても違うと考えられるので、これが日本において当てはまるかは不明です。イギリス系統の方が股関節や肘関節に異常がある個体が少ないと言うブリーダーも存在しますが、裏付ける研究などがあるかは不明です。これらのようなイギリス系統の優位性を主張する意見はそのブリーダーによるものであることが多く、飼育を検討する場合には広く情報を集めることが大切です。
カナダタイプ、系統については日本にはほとんどいないと考えられます。主にカナダ国内で改良されたゴールデン・レトリーバーに合わせ、カナダケネルクラブによって設定されたスタンダードだと思われます。そのため、タイプも系統もほぼ同じ特徴であると考えられます。どちらかと言えば見た目などはアメリカ系統に近いようです。
■ショータイプとフィールドタイプ
日本に多いのはショータイプのゴールデン・レトリーバーです。ペットショップなどで販売されることも多いため、ショーに出陳している犬が近い祖先にほぼいない可能性もあります。しかし、ショーに出陳されていないことはフィールドタイプであることを意味するのではありません。どちらかと言えば「家庭犬タイプ」と呼ばれるタイプに属するのかもしれませんが、基本的にショータイプの方が当てはまる特徴が多いと思われます。
ショータイプの特徴
・ドッグショーに出陳するためスタンダードに則った繁殖がされる
・セラピードッグや身体障害者補助犬としても使われる
・骨量があり、がっしりとしている
・ゴールドやクリームの毛色
・毛は長くて多く、ふさふさしている
・よりフレンドリーで穏やか
・運動量が少なめ
(ショータイプである以前に鳥猟犬種であるため、絶対的に運動量が少ないわけではありません。)
フィールドタイプの特徴
・実猟やフィールドトライアルに使われる
・救助犬やアジリティー、ドッグスポーツにも向く
・小さめでスリムであり、動くのに適した身体である
・ゴールドからレッドまで様々な毛色
・比較的毛が短い
・より活発で意欲的
・運動量が多め
ショータイプとフィールドタイプの違いはイギリスタイプとアメリカタイプの違いに似た部分もありますが、必ずしも一致するわけではありません。そもそもイギリスタイプもアメリカタイプもそれぞれケネルクラブが定めるスタンダードがあるため上記の特徴は基本的にショータイプに当てはまるものです。
■デュアルパーパス
デュアルパーパスとは、ダブルパーパスとも呼ばれ、日本語では二重目的系統と言われる系統のことです。ショータイプとフィールドタイプの両方の良さを取り入れ、ショーに出陳しながらレトリーブ能力を備えた犬を繁殖することを目的としています。毛色はクリームからゴールドまで様々で、イギリスタイプの場合もアメリカタイプの場合もあります。日本にもデュアルパーパスのゴールデン・レトリーバーを繁殖しているブリーダーも存在するようです。ただし、単にショータイプとフィールドタイプのゴールデン・レトリーバーを掛け合わせて出来た犬という意味ではありません。
■まとめ
ゴールデン・レトリーバーの系統とタイプを紹介しました。日本に多く存在するのはアメリカタイプだと思われているかもしれませんが、タイプと言う表現をするならイギリスで繁殖されているゴールデン・レトリーバーと同じタイプです。ただし、日本に入ってきているゴールデン・レトリーバーはアメリカから来たものが多いようなので、系統で言うならアメリカ系統が多いと言うことになるのでしょう。イギリスタイプ(系統)はクリーム色であると思われているかもしれませんが、毛色だけで言うならKCのスタンダードでは、AKCのスタンダードで認められていないクリーム色も公認しているというだけです。(クリーム色のゴールデン・レトリーバーが多いのは事実ですが)また、それとは別に、フィールドタイプやデュアルパーパスのゴールデン・レトリーバーも存在します。
系統によって全く違う部分もあるため、家族に迎える場合は自分の生活スタイルや好む犬のタイプに合わせた系統のゴールデン・レトリーバーを検討してみてもいいのではないでしょうか。性格や運動量は親犬や性別などにも左右され、個体差もあることを考慮に入れて子犬を選んでみてください。