ボーダー・コリーの一般的な毛色と言えば、ブラック&ホワイトだと思います。しかし、JKCで認められている毛色は35種類もあり、たくさんの毛色の種類があることはボーダー・コリーの魅力の1つでもあります。有名なものから珍しいものまでいくつかを写真つきで紹介します。(個人的な見解を含みます。また、写真準備中のものもございます。)
■JKC公認毛色
JKCで公認されている毛色は35種類と述べましたが、現在JKCのホームページなどの毛色の規定では次のように書かれています。
様々な毛色が認められている。ホワイトが優勢であるのは好ましくない。
https://www.jkc.or.jp/archives/world_dogs/2784
ドッグショーなどでどの程度まで毛色の規定が適用されているかは不明ですが、元々能力を重視して繁殖されてきたためか余り毛色に関する規則は厳しくないようです。
■人気毛色(日本)
日本においては圧倒的にブラック&ホワイトのボーダー・コリーが多いです。個人的なイメージですが、ドッグショーに出陳されている犬、チャンピオンになる犬はブラック&ホワイトが多いように思います。やはりブラック&ホワイトの方がドッグショーでは評価されやすい、少なくとも片親をブラック&ホワイトにするのが好ましいなどの考えを持つブリーダーもいます。日本において「色物」と呼ばれるブラック&ホワイト以外の毛色、特にその中でも珍しいものは海外からの輸入犬であったりその子供であったりすることが多いです。
また、ボーダー・コリーにおいてはレアカラーが乱繁殖によるものである可能性は低いように思います。なぜなら先程も述べたように、レアカラーの個体は海外からの輸入犬であることが多いからです。海外の血統を定期的に入れることは遺伝子プールの観点から見ても良いことですし、少ない世代で劣性遺伝子(タンポイントやブルー、イザベラなど)を出すために無理な繁殖をしてレアカラーの犬を作出しているわけではないと思います。ボーダー・コリーが日本において悪徳ブリーダーが第一にターゲットとする犬種でないことも一因でしょう。また、ドッグショーで勝つことは難しい毛色かも知れませんが、海外ではレアカラーのボーダー・コリーがチャンピオンになることもありますし、日本よりもレアカラーのボーダー・コリーが多いです。
■毛色紹介
ボーダー・コリーの毛色の内、代表的なものを紹介します。だいたい多い順で、同じようなものはバイカラー→トライカラー→バイマール→トライマールの順番です。
【最も多い毛色】
最も多い毛色は圧倒的にブラック&ホワイトです。
・ブラック&ホワイト
最も一般的な毛色で、日本で出会うボーダー・コリーも圧倒的にこの毛色が多いです。ボーダー・コリーといえばこの毛色をイメージする人も多いのではないでしょうか。黒白のツートンカラーが知的な印象です。
【一般的な毛色】
ブラック&ホワイト以外のボーダー・コリーを繁殖しているブリーダーのホームページやブリーダーサイトなどで探せば見つかるであろう毛色です。全ては調べられませんが、『みんなのブリーダー』というブリーダーサイトによると、レッド&ホワイト→ブルー&ホワイト→ブルーマール→トライカラー(→恐らくチョコレート&ホワイト)の順に多いようです。ただし、珍し目の毛色であることは同じなので変動することはありますし、街中で出会う確率も地域によって変わると思います。
https://www.min-breeder.com/magazine/14754
・レッド&ホワイト
日本でも一般的な毛色です。優しい色味でブラック&ホワイトとはイメージが全く違いますね。遺伝子的には基本的にeeレッド(=クリアレッド)のことを表します。
・ブルー&ホワイト
日本でも一般的な毛色です。ブルーとは言いますが、実際はグレーのような色でブラックよりも柔らかい印象になります。ブルーの色合いは様々です。目の色は薄めで少し緑がかっている場合もあります。他の犬種のブルーの個体でも同じですが、上の画像のように子犬の頃は目の色がブルーのこともあります。
・チョコレート&ホワイト
日本でも一般的な毛色です。その名の通りチョコレート色で、目の色も少し薄めであることが多いです。
・ウィートン&ホワイト
日本でも一般的な毛色です。ウィートンは『小麦色の』という意味ですが、その名の通りレッド&ホワイトよりも色が薄く、さらに優しいイメージになります。レッドやウィートンを決めるのはあくまでブリーダーの主観になり、どちらとも言えないような中間の色合いも存在します。レッドとウィートンの遺伝子的な違いがフェオメラニン希釈遺伝子(Iシリーズ)によるものであることもありますが、ブルーやイザベラのようなユーメラニン希釈遺伝子(Dシリーズ:ユーメラニンを大きく希釈し、フェオメラニンも少し希釈する)による場合もあります。この場合は特に、毛色がレッドよりも少しくすんだ薄い色合いになり、目の色や鼻の色もユーメラニンの遺伝子に影響されて薄くなることがあります。
・トライカラー
日本でも一般的な毛色です。トライカラーとは『3色』という意味ですが、ボーダー・コリーにおける単なるトライカラーとは通常ブラックトライのことを表します。ブラック&ホワイト タンとも呼ばれ、ブラック&ホワイトに目の上や口の周り、足先がタンポイントといういわゆるクラシックトライの毛色です。場合によってはハウンドトライ(タンの部分の面積が広い)になることもありますが、こちらは日本ではかなり珍しいです。タンポイントが入るだけで印象も変わり、オーストラリアン・シェパードと見分けがつきにくいこともあります。個人的な意見として、トライカラーの個体はバイカラーの個体よりがっしりした体型に見える傾向があると思います。
・ブルーマール&ホワイト
日本でも一般的な毛色です。単にブルーマールとも呼ばれている。マール遺伝子を持つ毛色の中では最も一般的で、ブラック&ホワイトにマール遺伝子が加わった毛色になります。マールの個体に共通して言えますが、バイアイやブルーアイやパーティーアイがしばしば存在します。ブルーマールの毛色は凛々しい印象ですね。ブルーマールの個体は特に、タンポイントのある位置がマールになっていると茶色が出ることがあります。ボーダー・コリーにはブラックマスク(口の周りが黒い)の個体も存在しますので、ブルーマール&ホワイトの個体をブルーマールトライと思ってしまうこともあります。また、セーブルマールとの見間違いもあります。
【珍しい毛色】
日本にも存在しますが珍しい毛色です。街中で見かけることはほとんどないと思います。大きな公園やドッグイベントなどでは出会うことができるかもしれません。私自身もこの中の何種類かの毛色の子に出会ったことがありますが、その多くが犬のイベントにおいてです。
・イザベラ&ホワイト
日本にも存在する毛色です。チョコレート&ホワイトが希釈された毛色で、ミルクティーのような淡い色合いになります。海外では「ライラック」と呼ばれることもあり、その名の通り紫がかた不思議な色であるのも特徴です。
・セーブル&ホワイト
日本にも存在する毛色です。ボーダー・コリーには優性ブラックと劣性ブラックがありますが、優性ブラックに対し、セーブルは劣性であるため1代で出すのは難しい毛色と言えるでしょう。単にセーブル&ホワイトといえば、セーブルの部分の毛先が黒いものを指します。黒い部分の長さによって、クリアセーブル、ダークセーブルなど様々な種類がありますが、基本的にセーブルでまとめられます。茶色の部分の色合いもクリームセーブル、レッドセーブルなど様々ですが、他犬種と違い、こちらもあまり名称に入れられることはありません。
・シール&ホワイト
日本にも存在する毛色です。ブラック&ホワイトと似ていますが、光に当たると赤みがかっている毛色です。シールが生まれる原理はまだ分かっていませんが、セーブル因子を持つブラックだと考えられています。従って、セーブルを繁殖しているブリーダーの元で生まれやすいです。
・チョコレート&ホワイト タン
日本にも存在する毛色です。チョコレートトライとも呼ばれます。こちらもクラシックトライがほとんどです。子犬の時は毛が短く、遠くから見るとイザベラのように見えることがあります。
・ブルー&ホワイト タン
日本にも存在する毛色です。ブルートライと意味は同じですが、あまりこの名称では呼ばれないと思います。こちらもクラシックトライがほとんどです。ブルー&ホワイトにタンが入った毛色ですが、タンポイントも少し希釈されるので、トライカラーなどと比べるとブルーとタンの境目もぼやけた感じになり全体的に淡く優しい色になります。
・チョコレートマール&ホワイト
日本にも存在する毛色です。単にチョコレートマールとも呼ばれます。かなり珍しいですが、親の条件が揃えば(チョコレート×チョコレートマールなど)出しやすい毛色だと思うので、ブリーダーによっては多く生まれているところもあります。
・スレートマール&ホワイト
日本にも存在する毛色です。単にスレートマールとも呼ばれます。ブルー&ホワイトにマールが加わった毛色で、ブルーマールよりも全体的に薄い毛色になります。ブルー&ホワイトの割合が高めであるわりに、スレートマール&ホワイトはかなり珍しい毛色です。
・ブルーマールトライ
日本にも存在する毛色です。ブルーマール&ホワイト タンまたは単にブルーマール&タンとも呼ばれます。ブルーマールと同様に、精悍で凛々しい印象になります。生まれたばかりの頃は特にブルーマール&ホワイトと見分けがつきにくいことがあります。
【とても珍しい毛色】
私がブリーダーサイトなどで見かけたことのある毛色です。日本にも存在しますがとても珍しいです。幅広い毛色のボーダー・コリーを繁殖しているブリーダーでもあまり生まれない毛色だと思います。
・チョコレートセーブル&ホワイト
とても珍しい毛色です。セーブル系自体が日本では珍しく、ブリーダーも少ないため、チョコレートセーブル&ホワイトも珍しいですが、セーブルを含む様々な毛色のボーダー・コリーを繁殖しているブリーダーの場合、比較的生まれやすいです。チョコレート色の差し毛が入っているため、濃いレッド&ホワイトに似ています。また、ユーメラニンとフェオメラニンの境目が分かりにくいため、淡く優しい印象になりますが、子犬の頃や、チョコレート色の部分が多い場合、チョコレートトライと見分けがつきにくいことがあります。
・ブルーセーブル&ホワイト
(写真準備中…)
とても珍しい毛色です。毛先がブルーで茶色の部分の色合いも少し薄いです。生まれたばかりの頃はまだ分かりやすいですが、差し毛が抜けていくとセーブル&ホワイトと見分けがつきにくくなります。
・イザベラ&ホワイト タン
とても珍しい毛色です。イザベラトライと同じ意味ですが、この名称では余り呼ばれないと思います。ブルー&ホワイト タンと同様、タンポイントも希釈され、淡い色合いになります。上の写真でも分かる通り、子犬の頃は目が青いことがあります。
・イザベラマール&ホワイト
とても珍しい毛色です。単にイザベラマールとも呼ばれます。また、イザベラは海外ではライラックと呼ばれることが多いので、ライラックマールとも呼ばれます。チョコレートマール&ホワイトよりも全体的に薄く、とても淡い毛色です。
・セーブルマール&ホワイト
とても珍しい毛色です。そもそもセーブルマールはセーブルと見分けがつきにくいことがあり、それは差し毛が少ないクリアセーブルに近いほど分かりにくいです。子犬の頃は差し毛が多いため、分かりやすいです。また、あまり差し毛が長い場合、シールマールやブルーマール&タンなどと見分けがつきにくい場合もあります。
・シールマール&ホワイト
とても珍しい毛色です。日本にも存在する可能性はありますが、この名称がつけられたボーダー・コリーはほぼいないでしょう。ダークセーブルマールや茶色に近いブルーマールと見分けがつきにくく、何代か遡るか遺伝子検査をしなければ分からないかもしれません。恐らくセーブルマールかブルーマールと登録されている可能性が高いと思われます。
・スレートマール&ホワイト タン
(写真準備中…)
とても珍しい毛色です。スレートマールトライと同じ意味です。とても淡い毛色で、生まれたばかりの頃はタンポイントが分かりにくいこともあります。
【日本にはほぼいない毛色】
ボーダー・コリーに作り出そうと思えば作り出せる毛色は無限に近い数あると思いますが、日本にはほぼいない毛色で、意外と知られていないものを紹介します。
・ブリンドル&ホワイト
日本にはほぼいない毛色です。ボーダー・コリーにブリンドルが存在することはあまり知られていませんが、黒と茶色の縞模様になり、その割合によって印象も異なります。
【番外編】
・ティッキング
特にワーキングラインにはティッキングと呼ばれる細かい有色の斑がホワイトの部分に入っている犬がいます。斑の量は個体差があり、余り目立たず少しだけあるものからオーストラリアン・キャトル・ドッグのようにほとんど黒く見えるものまで様々です。またトライカラーやチョコレート&ホワイトなどの場合、斑の色はホワイトがなかった場合に現れるはずだった毛色になります。また、この斑も基本的には遺伝になります。
・ホワイトが多い
ホワイトが優勢の毛色は望ましくないとJKCの規定には書かれていますが、このような毛色の犬は存在します。毛色は身体に占める面積が大きい順に表記されるので、ホワイトが優勢の毛色はホワイト&~と表記されます。
■まとめ
ボーダー・コリーの様々な毛色について紹介しました。定番のブラック&ホワイトから珍しいイザベラやセーブルまで、それぞれ個性的で綺麗な毛色です。もし街中でボーダー・コリーに出会うことがあれば、毛色にも注目してみてくださいね。