ラフ・コリーの毛色の種類


以前紹介したシェットランド・シープドッグと似ているとも言われるラフ・コリー。名犬ラッシーで有名ですが、実はもともとラッシーのようなセーブルの毛色は一般的ではありませんでした。今回はラフ・コリーの毛色をシェットランド・シープドッグとの違いも交えながら写真付きで紹介します。

■JKCの規定

JKCの規定では3色が認められているようです。シェッドランド・シープドッグより少ないですね。

3色が認められている:セーブル・アンド・ホワイト、トライカラー及びブルーマール。

セーブル

明るいゴールドから濃いマホガニー、あるいはシェ-デッド・セーブルまでの様々な色合い。ライト・ストローもしくはクリームは、非常に好ましくない。

トライカラー

主色はブラックで、脚及び頭部に濃いタンの斑をもつ。上毛に錆色がかったものは非常に好ましくない。

ブルーマール

ブラックが散って混じっているはっきりとしたシルバー・ブルーが主なもの。濃いタンのマーキングが好ましいが、なくともペナルティーは課せられない。大き なブラックの斑、上毛及び下毛がスレート色、及び錆色がかったものはきわめて好ましくない。

ホワイト・マーキング

以上の毛色はすべて、大小を問わず典型的なホワイトのコリーの斑を有する。以下のホワイト・マーキングは好ましい。全体ないし一部のカラー(頸周り)。前 胸。脚や足。尾の先端。ブレーズはマズルあるいはスカル及びその両方にあってもよい。

https://www.jkc.or.jp/archives/world_dogs/2771(見やすいように改行を加えています。)

■人気毛色(日本)

日本で人気の毛色は名犬ラッシーでおなじみのセーブル&ホワイト、歴史の古いトライカラー、大理石模様の美しいブルーマールの順ですが、ホワイトやセーブルマールといった毛色も存在します。

■毛色紹介

【公認毛色】

・セーブル

クリアセーブル
出典:Wikimedia Commons File:Collie-sable&white1.jpg
https://commons.m.wikimedia.org/wiki/File:Collie-sable%26white1.jpg
セーブル
出典:Wikimedia Commons File:Rough Collie 600.jpg
https://commons.m.wikimedia.org/wiki/File:Rough_Collie_600.jpg#mw-jump-to-license

毛色を忠実に表せば、セーブル&ホワイト(AKCでの登録名はセーブル&ホワイト)です。名犬ラッシーの映画の初代の俳優犬パルもこの毛色でした。日本においては最も多い毛色でコリーと言えばセーブルを思い浮かべる人も多いと思いますが、トライカラーより歴史は浅いと言われています。セーブルのコリーが有名になったきっかけは「オールドクッキー」という名前の犬だったそうです。セーブルはホモセーブル(AyAy)かヘテロセーブル(Ayat)かによって差毛の量が変わると言われ、ホモセーブルの方が差毛が少なく明るい色合いになります。差毛の少ない個体でも耳や顔は差毛があることが多いです。

・トライカラー

出典:Wikimedia Commons File:Cane da Pastore Scozzese PL.jpg
https://commons.m.wikimedia.org/wiki/File:Cane_da_Pastore_Scozzese_PL.jpg

ブラック&ホワイト タンとも呼ばれ、ラフ・コリーの昔からある毛色だと言われています。「名犬ラッシー」の原作では、ラッシーはトライカラーだとされていました。基本的にクラシックトライカラーで、ハウンドトライカラーになることはまずありません。非公認毛色の子犬を出さずにブルーマールと交配することができるので、ブルーマールを繁殖しているブリーダーのもとで重要な役割を持つ毛色です。

・ブルーマール

出典:Wikimedia Commons File:CollieRough1.jpg
https://commons.m.wikimedia.org/wiki/File:CollieRough1.jpg

毛色を忠実に表すとすればブルーマール&ホワイト タン(トライカラーにマール)です。トライカラーと同様、クラシックトライカラーです。ブルーマール同士やセーブルマールと交配するとダブルマールが、セーブルと交配するとセーブルマールが生まれる可能性があり、基本的にトライカラーとしか交配されません。マール遺伝子を持つのでブルーアイ、バイアイ、パーティアイを持つ可能性があります。

【非公認毛色】

・ホワイト

ホワイト(セーブルへデッド)
出典:Wikimedia Commons File:Amerikanischer Collie.jpg
https://commons.m.wikimedia.org/wiki/File:Amerikanischer_Collie.jpg

私はホワイトは公認毛色だと思っていましたが、どうやら公認毛色ではないようです。JKCのホームページには「典型的なホワイトのコリーの斑」=アイリッシュスポッティング(おそらく)としか記されていませんが、JKCがFCIの基準に則っているためFCIのスタンダードを参考にしたところ、”All white or predominantly white is highly undesirable”つまり、「体全体がホワイト、またはホワイトが優勢であることは非常に望ましくない」と太字で書かれていました。公認毛色なのか非公認毛色なのかは明確に書かれていませんが、仮にドッグショーに出陳したとしても重大な欠点とされると言うことでしょう。ちなみにAKCには公認されており、他の毛色より好まれないと言うこともありません。日本にも熱心にホワイトの毛色を繁殖しているブリーダーはいる(いた)ようですが、現在ではブリーダーサイトなどには掲載されていませんし、かなり珍しいようです。ホワイトと言っても身体全体がホワイトであるわけではなく、シェットランド・シープドッグで言うならば「カラーへデッドホワイト」という毛色です。頭部と、必ずではありませんが身体の一部に有色の斑があり、身体の全体の75%程度がホワイトです。有色の部分はセーブル、トライカラー(ブラック&タン)、ブルーマール、非公認毛色ならばセーブルマールのどれも可能性がありますが、マール系の場合はダブルマールを見分ける必要があります。また、ブルーマールやセーブルマールの中でも斑模様が均等ではなく頭部や少ない有色の斑のみではマールと分からないケースがあります。そのためホワイトとマールを交配する場合は慎重に行わなければなりません。ホワイトの遺伝子は不完全優性遺伝子のため、ホワイトの遺伝子をホワイトファクターと言い、ホワイトファクターを持つ犬の毛色をホワイトファクタードと呼びます。ホワイトファクターを持つ犬は後ろ足の内側(腹側)が白かったり、主に腹部のホワイトの面積が少し広かったり、白斑があったりするためホワイトが多く存在する系統の場合、経験のあるブリーダーならば見た目から判断して意図的にホワイトを生み出す(または生み出さない)ことはある程度可能でしょう。

・セーブルマール

セーブルマールを交配に使う場合だけでなく、ブルーマールとセーブルを交配させた場合にも生まれる毛色で、差し毛がマール遺伝子によりランダムに色が抜け、茶色と黒または茶色の濃淡による斑模様になります。マール遺伝子の影響が強い場合は色が抜けてホワイトになる場合もあり、その際は茶色と白の斑や黒、茶色、白に斑になることもあり、とても不思議な毛色になります。子犬の頃は差し毛が多いため分かりやすいですが、成犬になるとホモセーブルの場合は特に差し毛が抜けてしまうため、セーブルと見分けがつかないことがあります。そのため、知らないうちにダブルマールを生み出さないように注意が必要です。マール遺伝子を持つため、ブルーアイ、バイアイ、パーティアイを持つ可能性があります。

・ダブルマール

どの犬種においてもダブルマールは毛色名ではない、という意見はありますが、ブルーマールもセーブルマールもダブルマールに含まれると考えたので、この項にまとめます。毛色名で表すとすれば良く言われるのはホワイトマールだと思います。ダブルマールは最近知名度が上がり減ってきていますし、ダブルマールが非公認毛色のところに載っていたわけではありませんが、ラフ・コリーの歴史においてダブルマールが論点となったことがあるため解説します。ダブルマールは健康に影響があるため繁殖してはいけないということは昔から知られていました。しかし、2006年アメリカのWyndlair犬舎で美しい犬を生み出すために、綿密な計画の元セーブルマールの父親とブルーマールの母親(両方がチャンピオン)を交配し「Wyndlair Avalanche(ウィンドレア・アヴァランチ)」という名前のダブルマール(ブルーマール)のオスの子犬が生まれます。名前の由来は不明ですが、Avalancheとは英語で「雪崩」という意味で、アヴァランチの白い毛色を表す名前です。アヴァランチ自身はダブルマールのためかタイトルを持っていませんが、アヴァランチを生み出したブリーダーはアヴァランチを交配に使い、そのブルーマールの子供たちはドッグショーで活躍しました。アヴァランチはダブルマールでしたが確かに美しく、その子供たちがそれをドッグショーで証明しています。しかし、有名なブリーダーが健康よりも美しさを重視して、わざとダブルマールの繁殖を行ったことは世界中で物議を醸しました。アヴァランチの子孫は日本にも入ってきていると言われます。もちろんダブルマールの犬の子孫でもその犬自身がダブルマールでなければ遺伝学的には問題ないと考えられますが、アヴァランチの子孫を積極的に交配に使うことはアヴァランチを生み出した歴史が世界中で容認されていることをも意味しています。ラフ・コリーを購入するなら日本ではブリーダーが主流のルートですし、日本で現在ダブルマールを生み出す繁殖は行われていないと信じたいです。

・マルチーズブルー

正確に言うとマルチーズブルー&ホワイト タンです。シェットランド・シープドッグと同様に、アティピカルマールによってブルーマールになるはずの部分がグレーになっている毛色です。日本で積極的に繁殖しているブリーダーはいないと思います。ラフ・コリーにおいてはグレーコリー症候群が知られており、グレーのコリーは健康上の問題があると思われることもありますが、マルチーズブルーのコリーに関しては特に問題はありません。(グレーコリー症候群のラフ・コリーは通常タンポイントを持たないと言われています。)

■まとめ

ラフ・コリーの毛色について写真付きで紹介しました。名犬ラッシーの犬種と言えばだいたいは通じる犬種ですが、ホワイトコリーなど、知らない毛色もあったかもしれません。ラフ・コリー自体あまり数が多くないのでブルーマールやホワイトなどを見られる機会はなかなかないかもしれませんね。

■参考文献

いずれも2023/10/2参照

コリーの毛色 コリー専門マザーレイク (motherlakecollie.sakura.ne.jp)

名犬ラッシーの犬種「ラフコリー」を深堀!物語のあらすじと共にコリーについて解説! – Petan[ペタン]

Wyndlair Avalanche, ROM | Wyndlair Collies

156g01-en.pdf (fci.be)

Collie.pdf (akc.org)


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