日本でも長年トップ3に入るほど人気のダックスフンド。3つのサイズバラエティーと3つの毛質のバラエティーがあることはよく知られていますが、毛色については意外と知らない方も多いかもしれません。また、非公認毛色が「レアカラー」として人気な犬種でもあります。公認毛色、非公認毛色それぞれを写真付きで紹介します。
■JKCの規定
JKCにおけるダックスフンドの毛色の規定の文章がとても長く、引用の範囲を超える可能性があるため、リンクを貼ります。
■人気毛色(日本)
ダックスフンドはペットショップでも多く見かける犬種のため、目的によって求められる毛色が異なります。ドッグショーやショーブリーダーから子犬を譲り受ける場合ではブラック&タンやレッドを筆頭とする色の濃い毛色が多かったり人気であったりしますが、それ以外の場合、シルバーダップルなどの珍しい毛色やクリームなどの薄い毛色が求められることもあり、レアカラー、時には非公認毛色の個体が高価に取引されることも多いです。以前は健康に問題があるとされるダブルダップルの個体が「珍しい毛色」として販売されることも少なくなかったようです。反対に、ブリンドルのような、公認毛色でも珍しく、あまり人気のない毛色もあります。
■毛色紹介
JKCにおけるダックスフンドの公認毛色は2026年1月1日以降変更になります。ここでは変更後の分類を採用しています。
【公認毛色】
・ブラック&タン
一般的な毛色です。愛称は「ブラタン」です。ショーブリーダーが繁殖したりドッグショーに出陳したりすることも多い毛色です。
・ブラウン&タン
一般的な毛色です。チョコレート&タンという名称や、「チョコタン」という愛称の方が一般的ですが、2026年からの改定でブラウン&タンに統一されるようです。ブラウンの色合いは個体差がありますが、JKCのホームページによると、ブラウンはチョコレートより濃い色合いだそうです。
・レッド
一般的な毛色です。ショーブリーダーが繁殖したりドッグショーに出陳したりすることも多い毛色です。差毛があるものをシェーデッドレッド、ないものをクリアレッドと呼ぶことがあります。ロングヘアー、ワイアーヘアーの場合耳先などの長い毛があるためシェーデッドレッドが分かりやすいですが、ショートヘアーの場合かなり差毛が多くなければ分かりにくいことがあります。シェーデッドレッドの個体はタンポイントの遺伝子を持つ(Ayat)と言われていますがどの程度正しいかは不明です。差毛は成長とともに減っていきます。また、レッドの中でも色の濃いものをマホガニーレッド等と呼ぶこともあります。クリームなど色の薄い毛色が人気の傾向があるため、色の濃い個体はペットショップなどで見ることは珍しいイメージがありますが、ドッグショーでは一般的です。差毛がブラウン(チョコレート)のものも少なからず存在し、健康上の問題はないものの、「ボケチョコ」と呼ばれあまり好まれません。差毛がないクリアレッドの場合でもブラウン因子を持ち、ブラックポイントの色が薄い場合があります。レッドにおいて鼻の色がレディッシュブラウンは好ましくないとスタンダードに書かれているため、ドッグショーなどではブラウン因子を持つレッドの毛色は良くないでしょう。また、非公認毛色であるイエロー、ゴールド、クリームにも共通して言えることですが、eeレッド(生まれたときから差毛がない)の場合、鼻の色が成長に伴ってピンク色に変わることがありますが、ドッグショーに出陳するのでなければ特に問題はありません。
・シルバーダップル&タン
単にシルバーダップルとも呼ばれます。ダップルとはマールのダックスフンド特有の呼び方で、シルバーダップルは黒と灰色の斑模様を指します。「シルバー」という名称ではあるものの、ブラックにマール遺伝子が加わった毛色です。タンポイントの入る位置や濃さは基本的に変わりません。(タンポイントは斑にならない。)マール遺伝子を持つため、パーティーアイ、バイアイ、ブルーアイになることがあります。
・ブラウンダップル&タン
単にブラウンダップルとも呼ばれます。チョコレートダップル&タン(チョコレートダップル、チョコダップル)と呼ばれていましたが、2026年の改定でブラウンダップル&タンに変わります。ブラウンダップルの部分は焦げ茶色と薄茶色(白味がかっている)の斑模様になります。マール遺伝子を持つため、パーティーアイ、バイアイ、ブルーアイになることがあります。
・ブリンドル
珍しい毛色です。ダックスフンドにブリンドルのイメージが少ないためか、あまり人気はありませんが、個性的で美しい毛色です。ブリンドルはユーメラニンとフェオメラニンの縞模様を表します。ブリンドルは通常のブリンドル(ブリンドル1色)と、ブリンドルポインツの2種類があります。通常のブリンドルの場合、ブラックが多いブラックブリンドルやフェオメラニンが濃いレッドブリンドル、フェオメラニンが薄いクリームブリンドル(非公認)、フェオメラニンの割合が大きいタイガーブリンドル、ユーメラニンが焦げ茶色であるチョコレートブリンドル(ブラウンブリンドル)など様々な種類があります。ブリンドルポインツの場合、ブラック&タンやブラウン&タンのタンポイントの部分がユーメラニンとフェオメラニンの縞模様になります。ゴーストタンや主に子犬の頃でタンポイントが黒っぽい時には見分けにくいことがあります。ブルーブリンドルやイザベラブリンドルはほとんどいませんが、非公認毛色です。ブリンドル自体珍しいためあまり話題になっていませんが、チョコレートブリンドル(ブラウンブリンドル)やブリンドルダップルが公認毛色なのかは不明です。
・ワイルドボア
ワイアーヘアーのダックスフンドのみに認められている毛色です。日本ではワイアーヘアーのダックスフンド自体が珍しいですが、ワイアーヘアーのダックスフンドの中では一般的な毛色です。ワイルドボアとは「イノシシ」という意味で、ブラック&タンに似ていますが、ブラックというよりウルフカラー(ユーメラニンとフェオメラニンのバンディング)で、野生動物に多い毛色です。ワイルドボアの中でも、ブラウンのものをブラウン・ワイルドボアと呼びます。チョコレートボアと呼ばれることもあります。
【非公認毛色】
・イエロー系
2020年にスタンダードが改正され、2026年から血統書に×がつく毛色です。イエローはレッドより薄い茶色のことで、名前の通り黄色がかっています。イエロー系には単色のイエロー(クリアイエロー、シェーデッドイエロー、レディッシュイエロー等)の他、ブラック&イエロー、ブラウン&イエローなどのタンポイントがイエローという毛色も含みます。ただし、差毛のある場合に使われることが多く、差毛のない場合は、ゴールドより薄くクリームより濃い毛色をイエローと呼ぶことが多いようです。レディッシュイエローとは赤味がかったイエローのことで、レッドほど濃くはないですが、マズルなど少し色が赤っぽく濃くなっています。主にシェーデッドです。シェーデッドイエロー(恐らくシェーデッドクリームも)はワイアーヘアーにおいては「デッドリーフ(枯葉色)」または「ドライリーフ」と呼ばれ、こちらも非公認です。
・ゴールド系
2020年にスタンダードが改正され、2026年から血統書に×がつく毛色です。ゴールド系はゴールデン・レトリーバーのような光沢のある茶色〜黃色ですが、ほとんど(クリア)ゴールドの場合にしか使われず、ブリーダーによってイエローやクリームに統一する場合もあります。クリアイエローがゴールドに統一されることもあります。
・クリーム系
2017年に非公認毛色となった毛色です。クリームはフェオメラニン発現の毛色の中では最も薄い毛色です。クリーム系には単色のクリーム(クリアクリーム(ピュアクリーム)、シェーデッドクリーム)の他、ブラック&クリーム、ブラウン&クリームなどのタンポイントがクリームという毛色も含みます。クリームの内、劣性遺伝子(ee)によるピュアクリーム(差毛なしのクリーム)は、イングリッシュクリームと呼ばれることもあります。ピュアクリーム(恐らくクリアイエローも)はワイアーヘアーでは「ウィートン」と呼ばれ、こちらも非公認です。
・ブルー系
ブルーはブラックが薄められた毛色で、ブルー系にはブルー&タン等の2色系やブルーダップル&タン等の多色系も含まれます。ダックスフンドにおいてはブルー系の毛色のCDAが知られています。
・イザベラ系
イザベラはブラウン(チョコレート)が薄められた毛色で、イザベラ&タン等の2色系やイザベラダップル&タン等の多色系も含まれます。ダックスフンドにおいてはイザベラ系の毛色のCDAが知られています。
・レッドダップル
レッドダップルはその名の通りレッドにマール遺伝子が加わったものです。ロングヘアーのシェーデッドレッドダップルの場合分かりやすいですが、ショートヘアーやワイアーヘアー、クリアレッドの場合はフェオメラニンはほとんど影響されないため見分けにくく、安易に繁殖に使ってしまうとダブルダップルを生み出す可能性があり危険でもあります。通常子犬の頃は差毛が多く判断しやすいです。また、写真などではブリンドルと見分けにくいこともあります。
・ソリッド系
ソリッド系とは、ブラック、ブラウン、ブルー、イザベラのタンポイントがない1色の毛色を指しますが、フェオメラニン発現の毛色(レッド等)は除きます。毛色によって、「〜ソリッド」と呼ばれます。ソリッドは優性なので、ゴーストタンの個体がとても多いです。特に、ブラックソリッドのゴーストタンは外見から分かりやすいです。
・パイボールド系
パイボールド系とは、有色の地(ユーメラニンまたはフェオメラニンまたはその両方)にホワイトの斑、もしくはその逆の毛色を表します。他の犬種でいう「〜&ホワイト」や「ホワイト&〜」と同じです。有色部分は、レッド、ブラック&タンなど様々です。白斑の部分にティッキング(細かな有色の斑)が入ることもあります。レッドパイボールド、ブラック&タンパイボールドなどの名称で呼ばれます。ダップルパイボールドはダブルダップルとの見分けがつきにくいです。見た目だけでなく祖先犬を遡って判断する方が良いです。
・ダブルダップル
恐らく最近はかなり減りましたが、ダックスフンドはダップルが人気で高価な場合もあります。ダブルダップルという毛色の名前が存在するかというのには賛否がありますが、JKCのサイトには書かれていたので、毛色と仮定します。ダブルダップルの健康上の問題が知られてきたためペットショップやブリーダーサイトなどで見かけることはほとんどないと思いますが、ダップル因子を持つレッドとダップルを交配してしまったり、クリプティックマール(ブラック&タンやブラウン&タンと間違われやすい)やアティピカルマール(ブルー&タンと間違われやすい)とダップルを交配してしまったりすることで、ダブルダップルが生まれてしまうケースは未だにあります。また、真偽の程は不明ですが、パピーミルなどでダップルの子犬を多く産ませるために親犬として飼育されている可能性はあります。パイボールド(特にシルバーダップルパイボールドやブラウンダップルパイボールドなどのダップル系)と区別がつきにくいです。
■まとめ
ダックスフンドの毛色を写真付きで紹介しました。ダックスフンドは長年人気犬種なので、見かけたことのある毛色も多かったのではないでしょうか。ブリンドルやワイアーヘアーのみの毛色はなかなか見ないかもしれません。2026年の改定がダックスフンドの毛色の人気にどのように影響するのかはまだ分かりませんが、今後人気毛色が変化していくかもしれませんね。
(追記)
アメリカン・ダックスフンド(Amerikanischer Dackel)についてのコメントを頂きましたので、解説されたホームページのリンクを貼っておきます。
アメリカの犬種標準に従って繁殖されたダックスフンドで、ソリッドやパイボールドなどより多くの毛色があることが特徴です。
“ダックスフンドの毛色の種類” への2件のフィードバック
初めまして。ドイツではアメリカンダックスというダックスフントがいます。アメリカでいるかどうかわかりませんが、短毛とロングの中間で、色は2色以上です。
とても楽しく拝見させていただいてます!
初めまして。返信遅くなりすみません💦
アメリカンダックス調べてみました。普通のダックスよりカラフルなのが特徴なのですね!
コメントありがとうございます!