“ラフ・コリーの小さい版”とも思われがちなシェットランド・シープドッグですが、2犬種は様々な点で異なります。毛色もその一つ。今回はシェットランド・シープドッグの毛色について写真付きで紹介します。
■JKCの規定
セーブルクリアなものか、あるいはシェードのあるもの。色は薄いゴールドから濃いマホガニーまでで、色調は鮮やかである。ウルフ・セーブルやグレーは望ましくない。トライカラーボディはブラックで、濃いタン・マーキングが好ましい。ブルーマールきれいなシルバー・ブルーで、大理石のようにブラックが散らばっている。濃いタン・マーキングが望ましいが、なくても欠点とはみなされない。上毛または下毛に大きなブラックの斑や褪せた色が見られるものは極めて望ましくない。全体的な色調はブルーである。ブラック&ホワイト/ブラック&タンこれらも認められた毛色である。以上の毛色は、ブラック・アンド・タンのものを除き、ブレーズ、頸周り、胸、フリル、脚、尾先にホワイト・マーキングが見られる。これらの部分の全て、あるいはいくつかの部分にホワイト・マーキングが見られるのが望ましいが、なくても欠点とはみなされない。いかなる毛色においても、ボディの白い斑は極めて望ましくない。
https://www.jkc.or.jp/archives/world_dogs/2817
■人気毛色(日本)
日本で最もよく見かけるシェットランド・シープドッグはセーブル&ホワイトだと思います。トライカラーも比較的多くいますが、ブルーマールやバイブラックは珍しいです。ブルーマールやバイブラックはブリーダーサイトなどでも相対的に値段が高かったりもします。
■毛色紹介
【公認毛色】
・セーブル&ホワイト
日本では最も多い毛色です。差し毛の長さや量、根本の毛色の濃淡は個体差があるため、細かい括りで呼ばれることもあります。例えば、差し毛がほとんどない(顔周りや耳辺りに差し毛が残ることが多いです)場合、クリアセーブル&ホワイト(ピュアセーブル&ホワイト、ゴールデンセーブル&ホワイト)、差し毛が多く背中が焦げ茶色に見える場合、マホガニーセーブル&ホワイト(レッドセーブル&ホワイト、シェーデッドセーブル&ホワイト)、差し毛が多く、背中がとても暗い色の場合、ダークマホガニーセーブル&ホワイト(ダークシェーデッドセーブル&ホワイト)などで、同じ毛色でも人によって呼び方は様々です。同じセーブル&ホワイトでもこの種類によって見た目の印象はかなり変わります。差し毛は子犬の頃は多く、成犬になるにつれて減っていきます。トライカラーの因子を持つ(Ayat)か持たない(AyAy)かによって毛色が変わると言われており、それを予測する時など大まかに区別するときは、ホモセーブルとヘテロセーブルという分け方をすることが多いようです。(慣例的に呼ばれているものなので、基本的にどの呼び方をしても通じると思います。)トライカラーの因子を持つセーブル(Ayat)の場合、ヘテロセーブルになるようですが、詳しい原理は不明です。バイカラーの遺伝子(a)をヘテロに持つ場合にどうなるかも不明です。また、マホガニーセーブル&ホワイトやダークマホガニーセーブル&ホワイト(ヘテロセーブル)はトライカラーと見分けがつきにくいこともありますが、トライカラーは目の上に麻呂眉のようなタンポイントがあるのに対しセーブル&ホワイトは顔に富士額のような模様があるため見分けることが出来ます。
・トライカラー
日本では2番目に多い毛色です。ブラック&ホワイト タンとも呼ばれる毛色で、一般的にクラシックトライカラーです。セーブル&ホワイトと違い、毛色の変化はほとんどなく、また毛色の濃淡による個体差もあまりありません。
・ブルーマール
日本では珍しい毛色です。毛色の登録名としては「ブルーマール」ですが、ブルーマール&ホワイト タンとバイブルーをまとめた名前です。ブリーダーサイトなどでは別々の名前で表示されていることも多いです。ブルーマール&ホワイト タンの方が数は多く、バイブルーはとても珍しいです。ブルーマール&ホワイト タンはトライカラーにマールが加わった毛色で、バイブルーはバイブラックにマールが加わった毛色(ブルーマール&ホワイト)です。どちらの毛色もマール遺伝子を持つのでパーティーアイやバイアイ、ブルーアイの可能性があります。タンポイントがあるかどうかによってかなり印象が変わる毛色です。また、バイブルーは劣性遺伝子(aa)によって発現するものなので、淡いタンポイントが頬などに見えることは基本的にありません。ブルーマールはトライカラーやバイブラックと交配することができますが、セーブル&ホワイトと交配してしまうとセーブルマールの子犬が生まれる可能性があるため、積極的には行われません。また、ダブルマールの子犬が生まれることを防ぐためにブルーマール同士の交配は禁忌です。そのためなかなか頭数が増えず珍しいままであると考えられます。
・バイブラック
日本では珍しい毛色です。バイブラックとはブラック&ホワイトのことで、トライカラーからタンポイントがなくなった毛色とも言えます。バイブラックは劣性遺伝子(aa)であるため、基本的にゴーストタンは存在しません。バイブラックは特に、ブレーズの有無によって印象が大きく変わる毛色です。
・ブラック&タン
既に絶滅したのではないかと言われるほど珍しい毛色で、まだ存在するのかも不明です。他の毛色には存在するホワイトの斑(カラー、足先、尾先、ブレーズ、胸などの全てまたは全部)がありません。
【非公認毛色】
・セーブルマール&ホワイト
日本では珍しい毛色ですが、稀に存在するスタンダード外の毛色です。クラシックマールの場合、毛先の黒い部分のみが斑模様になります。マールが強いと根本の茶色の部分も希釈されることがあるため、様々な色が混じり合います。片親がセーブルマール&ホワイトの場合だけでなくセーブル&ホワイトとブルーマールを交配することでセーブルマール&ホワイトの子犬が生まれることがあります。ホモセーブルマール&ホワイトの場合、マールはとても分かりにくいです。ヘテロセーブルマール&ホワイトの場合も見分けが付きにくいこともあります。子犬の頃は差し毛が多く、茶色の部分が短いため分かりやすいですが、成長とともに分かりにくくなっていきます。マール遺伝子を持つため、ブルーアイ、バイアイ、パーティーアイの可能性があります。セーブルマール&ホワイトの犬自体のリスクは他のシングルマールの毛色の個体と同じですが、マール遺伝子を持つと分かりにくいために、セーブルマール&ホワイトやブルーマールの個体と交配して知らず知らずのうちにダブルマールの子犬が生まれてしまうという危険があります。そのため、セーブルマール&ホワイトの個体の交配は慎重に行わなけれなりません。
・カラーへデッドホワイト
日本では珍しい毛色で、スタンダード外です。頭部がセーブル、トライカラー(ブラック&タン)、ブルーマールの何れかで、身体が主にホワイト(有色の斑がある場合もある)の毛色です。パイボールド遺伝子によるもので健康上の問題は特にないと考えられます。(白斑遺伝子があると難聴の可能性があるという研究がありますが、シェットランド・シープドッグにも当てはまるかは不明です。また、エクストリームホワイトではなくパイボールドであること、頭部が有色であること(ダルメシアンなどの白斑遺伝子を持つ犬種において、頭部の大きなパッチは難聴と負の関係があるという研究があります。)から難聴の可能性はあまり高くないと考えられます。)しかし、非公認毛色であることから、好んで繁殖されることはないでしょう。また、カラーへデッドホワイトは特に有色の部分がブルーマールである時ダブルマールとの区別がつきにくいことがあったり、有色の部分が少ないためマール遺伝子を持たないセーブルやトライカラーだと思ってブルーマールやセーブルマールと交配してしまったが実際はセーブルマールやブルーマールであるという可能性があります。そのため、カラーへデッドホワイトの繁殖は慎重に行うべきです。また、パイボールドは不完全優性遺伝子なので、パイボールド遺伝子をヘテロに持つ場合、「ホワイトファクター」と呼ばれ、後ろ足の内側など白い部分の面積が大きい、背中の毛色に白斑があるなどの特徴が現れることがあります。
・マルチーズブルー
とても珍しい毛色で、非公認毛色ですが日本でも繁殖を行っているブリーダーは存在します。くすんだ灰色で少しまだらに見えることもあります。マルチーズブルー&ホワイト タン、バイマルチーズブルーともに存在します。理論上はマルチーズブルーセーブルマール&ホワイトも存在します。(マルチーズブルー&タンはブラック&タンがほぼいないのでさらに珍しいです。)他の犬種にもある毛色ですが、シェットランド・シープドッグ特有の毛色名で、犬種のマルチーズとは関係はありません。この毛色の原理はアティピカルマールで、通常のマール(クラシックマール)よりは弱いマールですが、マルチーズブルー同士やブルーマールと交配することはよくありません。
■まとめ
シェットランド・シープドッグの毛色の種類について紹介しました。公認毛色も非公認毛色も個性的な毛色が多いです。ラフ・コリーにはない毛色(バイカラー)や、ラフ・コリーでは公認でもシェットランド・シープドッグでは非公認である毛色など、ラフ・コリーとの違いについても読んでみてくださいね。