グレート・デーンの毛色と言えば、何を思い浮かべますか。一般的なものではフォーンやブラックでしょうか。グレート・デーンに特徴的なハルクインと答える人もいるかもしれません。以前、グレート・デーンの毛色と繁殖について書きましたが、様々な犬種の毛色紹介の記事を書いているので、グレート・デーンの毛色の種類についても改めて書きたいと思います。
■JKCの規定
グレート・デーンは3つの異なったバラエティーで繁殖される。:フォーン&ブリンドル、ハールクイン&ブラック、ブルー
グレート・デーン | 一般社団法人 ジャパンケネルクラブ (jkc.or.jp)
・フォーン:淡いゴールデン・フォーンから濃いゴールデン・フォーン。ブラック・マスクが好ましい。胸や指趾に小さなホワイトのマーキングがあるのは好ましくない。
・ブリンドル:主色の淡いゴールデン・フォーンから濃いゴールデン・フォーンに、肋骨に向かってブラックの縞が入っている。マーキングは出来る限り均等で 明瞭なものほど良い。ブラック・マスクが好ましい。胸や指趾に見られる小さいホワイトのマーキングは好ましくない。
・ホワイトにブラックの斑(ハールクイン):主色が純白で、出来る限り縞のないもの。ボディ全体に不規則な漆黒の斑が満遍なくちらばっているもの。グレーやブラウンがかった斑は好ましくない。
・ブラック:漆黒。ホワイトのマーキングは許容される。これにはボストン・カラーも含まれ、ボディが毛布のようにブラックで被われているが、マズルや喉、 胸、腹、脚、尾の先端はホワイトでも良い。又地色が白でそれに大きな黒斑のあるもの。
・ブルー:明確なスチール・ブルーで、胸や足のホワイトのマーキングは許容される
■人気毛色(日本)
日本ではグレート・デーン自体が珍しいので、地域や時代により傾向が変わると思いますが、ブリーダーサイトやInstagramなどによると、フォーンが最も多く、ブラックが次に多く、ハルクイン、(非公認ですが)マールが続き、ブリンドルやブルーは珍しいというイメージです。
■毛色の種類
【公認毛色】
グレート・デーンの公認毛色は5種類です。(ブラックとマントルを区別すると6種類)
・フォーン
様々な色調の茶色です。日本では最も多い毛色だと思います。JKCの規定にはブラックマスクが好ましいと書かれていますが、日本にいるグレート・デーンのほとんどはブラックマスクがあります。
・ブリンドル
黒と茶色の縞模様です。日本ではかなり珍しいです。黒と茶色の割合、茶色の色調は様々です。黒が多い場合、「リバースブリンドル」、「ブラックブリンドル」やグレート・デーン特有の呼び方で「オニキスブリンドル」と言い、茶色が多い場合、「フォーンブリンドル」や「タイガーブリンドル」などと言います。ブラックマスクは見えにくいですが、ブラックマスクを持つ個体はその部分は縞模様がなく黒一色となります。
上の写真のブリンドルは「フォーンブリンドル」や「タイガーブリンドル」と呼ばれる毛色ですが、ブラックのストライプがまばらになっています。このようなまばらのブリンドルはグレート・デーンやウィペットにおいてはしばしば見られますが、他の犬種では珍しいです。
・ハルクイン
ホワイトの地にブラックの大きな斑が散らばったもので、グレート・デーン特有の毛色です。日本でも人気かつ有名です。とても華やかで、他の毛色に比べて価格も高くなる傾向があります。ブラックと交配されるので、アイリッシュ・スポッティング(マントルの白斑遺伝子)を持つ個体もおり、その場合アイリッシュ・スポッティングの部分には黒い斑も入りませんが、見分けるのが難しいこともあるかもしれません。
・ブラック
単色のブラックを「ブラック」と呼び、JKCの規定上にある「ボストン・カラー(胸や足先などが白)」のものを「マントル」と呼びます。日本では多い毛色ですが、マントルは珍しいです。ハルクインと交配できる唯一の毛色でもあります。
・ブルー
ブラックが薄まった、光沢のある青みがかった灰色の単色の毛色です。日本ではかなり珍しいです。ブラックと交配されます。ブラックポイントはブルーになり、目の色も明るくなることがあります。ホワイトのマーキングが胸や足先にあることがあります。
【非公認毛色】
グレート・デーンは公認毛色は多いですが、公認毛色同士を交配しても非公認毛色の子犬が生まれることがあります。そのため、繁殖の規定があるのですが、その繁殖の規定に沿っていても生まれる非公認毛色もあります。
・マール
日本にもハルクインと同じくらい存在します。ハルクインは基本的にブラックと交配されるので日本で見られるのはほとんどがブルーマールです。ハルクインを繁殖させようと思うと理論上ハルクインと同じだけマールが生まれます。
・マールクイン
マールハルクインやダブルマールハルクインとも呼ばれる毛色で、ハルクインに見える場合、公認毛色にもなり得ます。遺伝子的にはMMHh、つまりダブルマールなので聴覚障害、小眼球症などの健康問題を抱えている可能性があります。見た目はほとんどホワイト一色のものからハルクインのパッチが少ない、小さいだけに見えるものまで様々です。マールクインのパッチはグレーとブラックであると言われることもありますが、おそらくそれはダブルマール(MMhh)のことでしょう。マントルの遺伝子を持ったマールもマールクインに見えることがあるかもしれませんが、遺伝子的には全く違います。ブルーマールと異なり、繁殖する際にマール同士、ハルクイン同士、マールとハルクインを掛け合わせなければ生まれない毛色です。英語のスペルは”merlequin”です。
・ダブルマール
ハルクイン遺伝子を持たないダブルマール(MMhh)で、他の犬種におけるダブルマールと似たような見た目になります。聴覚障害、小眼球症などの健康問題を抱えている可能性があります。ハルクインは基本的にホワイトの地にブラックのパッチ、マールクインはほぼホワイト(もしくはブラックの小斑)、ダブルマールはホワイトの地にグレーとブラックのパッチになることが多いです。ただしダブルマールでも体全体がほぼホワイトになる個体もいるので、マールクインと見分けるのが難しいこともあります。マール同士、ハルクイン同士、マールとハルクインの交配で生まれます。
・フォーンクイン
ハルクインのパッチがフォーンの毛色です。ブラックマスクの部分はパッチもブラックになります。フォーンはブラックに対して劣性なので、祖先にフォーンがいるブラックなどとハルクインを交配するとフォーンクインが生まれる可能性があります。英語のスペルは”fawnequin”です。
・ブリンドルクイン
ハルクインのパッチがブリンドルの毛色です。白、黒、茶の三色のまだらのような珍しい毛色になります。ブリンドルはブラックに対して劣性なので、祖先にブリンドルがいるブラックなどとハルクインを交配するとブリンドルクインが生まれる可能性があります。
・ブルークイン(ポーセレン)
ハルクインのパッチがブルーの毛色です。ブラックポイントもブルーになります。ハルクインには稀にブラックの中にブルーのパッチが混ざる犬もいるので見分けにくいかもしれません。
・ブルーフォーン
フォーンのブラックマスク、ブラックポイントがブルーの毛色です。フォーンはブラックやブルーに対して劣性なので、ブルーの遺伝子を持っていれば、ブラック同士やフォーン同士の交配でも生まれる可能性のある毛色です。フォーンの部分も少し淡い毛色になることがあります。
・ブルーブリンドル
ブリンドルの黒のストライプ、ブラックマスク、ブラックポイントがブルーの毛色です。ブリンドルはブラックやブルーに対して劣性なので、ブルーの遺伝子を持っていれば、ブラック同士やブリンドル同士の交配でも生まれる可能性のある毛色です。通常のブリンドルに比べて全体的に淡い色で、優しい印象になります。
・チョコレート
チョコレートはグレート・デーンの犬舎の中でも少数のみが繁殖している毛色で、単色のチョコレートだけでなく、チョコレートハルクイン、チョコレートフォーン、チョコレートブリンドル、チョコレートマール、ライラック(チョコレートの希釈)など様々です。あえてチョコレートを導入しない限りは通常生まれない毛色なので、他の非公認毛色とは異なり、公認毛色(のライン)同士の繁殖をした場合には生まれることはありません。
その他にも、公認毛色同士の交配をした場合に生まれる非公認毛色は存在します。
■まとめ
グレート・デーンの毛色の種類について紹介しました。ハルクインという特殊な毛色があるため繁殖も難しい犬種です。日本ではブルーマールを除く非公認毛色のグレート・デーンはほとんどいませんが、マールクインなど倫理的な問題を持つ毛色は特に、しっかりと知識を持ったうえで繁殖しなければいけませんね。