アティピカルマールとマルチーズブルー


シェットランド・シープドッグに「マルチーズブルー」と言う毛色があるのをご存知ですか?

JKC非公認毛色ですが、少数ながら日本にも存在するそうです。

マルチーズブルーの毛色の仕組みを紹介します。

■マルチーズブルーとは

マルチーズブルーとはシェットランド・シープドッグの毛色の名前で見た目がD遺伝子座(ダイリューション)がd/d(劣性ホモ接合)によることで起こる、ブルーに似た毛色です。場合によっては濃い灰色の地に黒の斑になります。

■マルチーズブルーの遺伝子

マルチーズブルーはD遺伝子座の対立遺伝子の劣性ホモ接合によって起こるのではありません。

マルチーズブルーとはブルーマールの一種であり、M遺伝子座の対立遺伝子によって決まります。

マール遺伝子については「マール遺伝子の名前」を参照してください

■アティピカルマールとマルチーズブルー

マルチーズブルーが発生するのは、クラシックマールよりSINE挿入が短い遺伝子(主にMaやMa+)が原因だと言われています。シングルマールの場合、クラシックマールよりも障害のリスクが低いため、非公認毛色ではあるもののその個体自体に健康上の問題が起こる可能性は高くないです。しかし、誤ってマルチーズブルー同士、またはブルーマールやバイブル―、セーブルマールの個体と交配してしまうと、障害が起こるリスクが高まるためラインにマルチーズブルーがいる場合は慎重に見極めるべきです。また、正確な名前はありませんがマルチーズマールのセーブルマール(恐らくブルーセーブルに近い毛色)になるとさらに見極めが難しくなるため出来ればトライカラーまたはバイブラックと交配するのが賢明です。マルチーズブルーのシェットランド・シープドッグを意図的に(マルチーズブルーであると分かって)繁殖されている日本のブリーダーの方はマルチーズブルーがダイリューション遺伝子によって起こるものではなく、ブルーマールの一種として繁殖されているようなので、大きな問題は起こらないと思いますが、マルチーズブルーはモザイクによってブルーマールやバイブル―の個体からも生まれることがあります。そのため、特に一般の方が繁殖を行う場合は祖先にマールの個体がいたり、トライやバイブラックとして登録されている場合でもブルーに近い毛色をした犬であるならば遺伝子検査を行うことが大切だと思います。

■まとめ

シェットランド・シープドッグのマルチーズブルーは昔から知られていたものの、その遺伝子が詳しく解明されたのは2018年の研究です。マルチーズブルーはJKCにおいては非公認毛色となるため、あまり繁殖されてこず数もとても少ないですが、マールから自然に発生することを考えるとマルチーズブルーという名称があるシェットランド・シープドッグだけにとどまらずアティピカルマールの毛色はマールが多い犬種ではこれから先もなくなることはないと思われる毛色です。マルチーズブルー自体は通常のシングルマール(クラシックマール)と比べても障害を持つ可能性が低いですが、ブルーマールの一種であることを理解せずに繁殖をしてしまうと障害を持った子犬が生まれてくる原因にもなります。もしかするとJKCで非公認であった理由は見た目の問題だったのかもしれませんが、科学的な研究によって明らかにされるずっと前から経験的に「非定型」マールとしてむやみやたらに繁殖していい毛色ではないと理解されていたのかもしれませんね。